わたし的『エール』辞典 その1~その3

『エール』が終わった直後、Facebookに11月28日~30日に投稿をしたものを、こちらにも残しておきたいと思います。

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ライブ活動を再開してから、なんとなく余裕がなくて、ライブ関係以外の投稿ができていませんでしたが・・・

『エール』が最終回を迎え、なんだか恒例になってしまった、朝ドラ、わたし的メモを書き留めておきます。
今回は中断もあって、投稿意欲が落ちていましたが、お友達の顔が浮かび、なんとか筆を取りました。
今回も前回『スカーレット』に続き、全まとめで、ボリューム満点。あ〜書いた。でもまだ続く(予定)。クラクラする文字数ですが、ご興味ある方は、覗いてみてくださいませ。
 
◆わたし的『エール』辞典 その1

【キャスト】編(話したいことがある人だけ)

窪田正孝(古山裕一):窪田正孝の朝ドラ出演と言えば、『花子とアン』での「朝市」の印象が強かったが、それを忘れさせるほどの主演力だった。朝ドラと言えば、”主役=ヒロイン”というイメージも、今回の『エール』を観ている間は、すっかり忘れるほど。唐沢寿明との共演と言えば『THE LAST COP』。そして、今野浩喜(五輪行進曲に裕一を推薦した役)と古田新太との共演『僕たちがやりました』(二階堂ふみの妻役が強烈過ぎて(いい意味で)忘れがちだったけど、現実世界での奥様は水川あさみ。共演が結婚のきっかけとなったドラマ。)。両ドラマとも、超機敏な動きを見せていたけど、静動両方を演じ分けられる素晴らしい役者だと思う。いずれの時も、元々持っている影が見えるのがさらに魅力。終盤「闘魂こめて」をサラッと歌ったシーンがあったが、上手い素地が見えたので、ガッツリな歌声も聴いてみたい。そう言えば、マウントレーニアの『風をあつめて』のカバーもかなりいい。

二階堂ふみ(関内音):上記で朝ドラの”ヒロイン”イメージを忘れていたと言いつつ、「音」がヒロインとして存在していたから成立していたこのドラマ。舞台の主演が決まり、妊娠で主演を降りるまで、再起後もまた、実力不足で身を引くまでの、鬼気迫る様子から絶望感溢れる様子の演技には息をのんだ。実際、ミュージカル歌手に囲まれながらのプレッシャーと努力は、相当なものだったと思う。一方、終始、自然なコメディエンヌぶりが素晴らしかった。

唐沢寿明(古山三郎):お調子者ながらも、この時代に長男の夢を全力で後押しし、跡継ぎを望む次男にそれを託した、世間や風習ではなく、子供の特性、息子自体を大切に思う優しい父親役がピッタリだった。貫禄。窪田正孝との絡みは、『THE LAST COP』で培った師弟関係が滲み出ていたようだった。面白くて優しい幽霊は大歓迎。

菊池桃子(古山まさ):80年代によく耳にしていた、あのふわふわした歌声からは想像できなかった、芯のある名女優さんになられたと思う。苦難の私生活や、40歳を過ぎて修士号を取るほどの勤勉力や、その後の教育力もさることながら、2013年NHKドラマ『ガラスの家』での悪女役は、かわいいだけじゃない「菊池桃子」の底力を知り、印象深い。

佐久本宝(古山浩二):出演歴を検索すると、彼を目にしたのは初めてではなかったようだが、記憶にはなく、今回初めて彼の存在を知った。あの次男の役どころにピッタリ。若いのに、ふてぶてしいまでの落ち着き加減で、序盤のヒール役のあの雰囲気を出せるのは、稀有な役者さんだと感じていたが、検索して22歳だと知り、ビックリ。お嫁さんに、突然の志田未来登場にもビックリ。

森山直太朗(藤堂清晴):『HERO』で犯人役でのゲスト出演の時は、浮いている感が強く、正直演技はどうかと思っていたが、藤堂先生役はすっぽりはまっていて、だいぶ役者としての印象が変わった。歌唱シーンは、多分、2シーン。幼少期の佐藤久志に向けて歌った「故郷」と戦地での「ビルマ派遣軍の歌」。森山直太朗、本領発揮だった。ちなみに、最終回での堀内敬子の歌唱力は素晴らしく、藤堂先生と昌子の子供は、きっと歌が上手かっただろうと想像する。

山崎育三郎(佐藤久志):幼少時よりミュージカル経験を重ねているだけあって、流石の歌唱力と演技力。以前、自身がトーク番組で話していた経験談が、心に熱く残っていて、彼を見る度に思い出すーー高校時代、アメリカ留学時に、アジア人ということでいじめを受けていたが、ダンスパーティの場で勇気を出して、皆の輪の中心に飛び出して行って、ミュージカル経験を活かしたダンスを踊ると、「(「育」三郎の)イーク!イーク!」と拍手喝采を受け、そこから周りの対応が一気に変わったーー。・・・その苦労と勇気の結果、射止めた奥様はなっち。

中村蒼(村野鉄男):『無痛〜診える眼〜』での、無痛症無毛症患者--髪も眉もなく、セリフも少ない、不気味な難役が一番印象的だったが、人間味溢れる役で一気に印象が塗り替わった。普段のおとなしさと、演技のスイッチが入っている時のギャップで、一段と演技力を感じる。実生活では、既に二児のパパとは驚き。

泉澤祐希(村野典男):彼と言えば、『ひよっこ』の三男。既に画面に映ると存在感がある彼が、突然出てきて、何者かと思ったら、鉄男の生き別れの弟だったとは。それにしても、20~30代男子、いい役者多いな~。

薬師丸ひろ子(関内光子):いつの間にか、コメディエンヌの大御所。「カ・イ・カ・ン」と言っていた10代の頃には考えられない貫禄。コメディエンヌとして後を追う二階堂ふみにピッタリな母親役。澄みわたる歌声は、約40年前から変わらず。劇中の讃美歌、圧巻。

光石研(関内安隆):薬師丸ひろ子との共演は『泣くな、はらちゃん』『ど根性ガエル』を思い出す。2人が発する世界観は、夫婦役にピッタリだと思う。関内家のお父さんも、この時代に、娘たちが活き活きと生きられる言葉を投げかける、本当にいいお父さんだった。スピンオフの幽霊里帰りもいい話だった。

吉原光夫(岩城新平):スピンオフで、幽霊の光石研を感じ取っている姿が最高だった。各方面で話題になっていた最終回の「イヨマンテの夜」。ホントにすごくて、即座に「吉原光夫」を検索したら、劇団四季出身のミュージカル俳優さんだったんですね。大納得。

松井玲奈(関内吟):SKE・乃木坂時代のことは知らないが、今回の役にはまっていて、いい役者だと思った。豊橋出身で、地元の役でもあったのか。

奥野瑛太(関内智彦):ラーメン屋に転身シーンが最高だった。ケンのことを「友達」というセリフに心打たれる。個人的には、ケンに養子になるように頭を下げるシーンに一番グッときた。さらに個人的に一番驚いたのは、この「奥野瑛太」という俳優が『SRサイタマノラッパー〜マイクの細道〜』の「MIGHTY」だったこと。思わず、残していた最終回の録画を食い入るように見直してしまった。オールバックにサングラスの”悪そうな”風貌で、ラップを奏でていたこの人と、同一人物であったとは・・・侮れない演技力と判明。磯村勇斗の『ひよっこ』での「秀」(有村架純の相手役)と『今日から俺は!!』の「相良」とのギャップに相当するくらい。

松大航也(関内ケン):淋しいのに強がる姿が愛おしかった。智彦と吟の息子になってくれて本当によかった。

森七菜(関内梅):梅の大きな黒縁メガネに見え隠れする素材のかわいさと、一見不愛想なセリフ回しのギャップにはまる。五郎ちゃんへの告白シーンと、馬具作り修行中に、目をつぶらせて、ほっぺにチューのシーンがたまらなかった。幼少期の子役ちゃん(新津ちせ)もかわいかった。

岡部大(田ノ上五郎):突然の弟子志望登場に、まさか、こんな展開になるとは。それにしても、岡部大の演技力には驚いた。『私の家政夫ナギサさん』出演時で存在感のある役を演じていたが、ここまでとは。なかなか上手くいかなかった馬具作りの試験で、裕一のアドバイスで「船頭可愛いや」を歌って、”ゾーン”に入った五郎ちゃんはすごかった。

柴咲コウ(双浦環):元々歌が上手い方だが、オペラとなると、歌唱法が全然違うし、国際的に名声のあるオペラ歌手の役を演じるのは、ミュージカル俳優たちが出演する中で、相当プレッシャーだったと思う。幼少期の音(清水香帆)と出会った初回登場時より、後に登場した時に歌声が力強くなっていたので、かなり訓練を重ねられたのだと思う。そして、相変わらず美しい。

金子ノブアキ(今村嗣人):ミュージシャンながら、以前より名優という印象が強い。スピンオフの愛憎劇・・・人間がなかなか手放せない、「嫉妬心」に絡む演技が絶品だった。あの2話は、金子ノブアキの回だったと思う。最初にこの方を認識したのは、ミュージシャンとしてではなく、まさしく朝ドラ『おひさま』でのヒロイン陽子(井上真央)の初恋相手役、川原功一だった。

古川雄大(御手洗清太郎):『あさイチ』のゲスト出演を観て、「スター御手洗」とのかなりのギャップに、癖のある役に対して相当な作りこみをしていながら、観ていて重さを感じさせないスマートさを感じ、その演技力に感動した。個人的には、そこまでミュージカルに強い関心があるわけではないが、ミュージカル俳優の歌と演技にかける訓練量が半端ないことは、よ~くわかる。

古田新太(廿日市誉):朝ドラの古田新太と言えば、何と言っても『あまちゃん』の太巻。今回薬師丸ひろ子と絡むことはなかったが、二階堂ふみが、裕一を売り込みにコロンブスレコードに乗り込み、古田新太とガシッと握手を交わした時には、太巻が鈴鹿ひろ美の娘と・・・!と思った。

野間口徹(梶取保):この方も名バイプレーヤー。スピンオフの話がまたよかった。この話の中の、幼少期の佐藤久志役の山口太幹くんの小生意気さも、超かわいかった。本編では、音に「椿姫」の真髄を教えるための寸劇での細かな動きがたまらなく、ハマった。

仲里依紗(梶取恵):これまでの仲里依紗にはない、新境地的な役。主役級のパワーを持ちながら、今回、物語のオアシス的存在の「喫茶バンブー」で、かつ、次元が違う場所にいるような役への徹し方が見事だった。この役どころ、仲里依紗の贅沢な使い方だったと思う。

古川琴音(古山華):登場当初は特に気になっていない存在だったが、『この恋あたためますか』が始まり、ふと、”あれ?この顔は・・・!”と、主演の森七菜演じる樹木のルームメイトが、華だと気づき、叔母と姪の同居ではないか!と一人盛り上がる。

高田聖子(東京帝国音楽学校の教師):出演時間は少なかったが、『やんちゃくれ』の講談師役がとても印象深く、久々に姿を見かけて懐かしかったので。

正名僕蔵(三隅 忠人):ご機嫌を取りながら、振り回されて、でも内心何を考えているかわからない・・・こういう役、ピッタリ。味方の役にも悪役にもどちらにも転べる役者さん。今回は、文句を言いつつ、最後まで付き合ってくれる芯ある役で、スッキリ。

吉岡秀隆(永田武):この人も存在感半端ない。彼の登場シーンは一気に空気が変わった。「貫禄」というには、いい意味で重さがない不思議な空気を醸し出す人。それでも、やはり「貫禄」を感じた。「純君」がこんなになるとは・・・。

宮沢氷魚(霧島アキラ):恐らく、本格的な音楽活動経験はないと思われるところ、お父さんの影を背負って、かなりのプレッシャーだったと思うし、出演当初の軽めの役柄も彼には難しいように思えたが、「霧島アキラ」として演じ切って、上手く着地されたと思う。

萩原聖人(警備員):初回の登場で、再登場があるものだと思っていたが、残念。この方も、年を重ねられて、苦労が顔に滲み出ている役どころが上手いなと、近年のドラマ出演でいつも感じている。

北村有起哉(池田二郎):彼の前朝ドラ出演『わろてんか』の「月の井団真 」は最高だったが、今回も素晴らしかった。絶妙なセリフ回し。間、リズム感。ひょうひょうとしながら、ものすごい存在感。一気に場が引き締まる。個人的には、『エール』のMVP。

志村けん(小山田耕三):トーク番組にはあまり出演されない方だったと思うが、撮影終了後に『あさイチ』に出演してほしかった。どんな思いで演技されていたのか聞いてみたかったと思う。あちらの世界で、最終回まで見守っておられたことでしょう・・・。

その2【○○】編に続く(予定)。
 
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わたし的『エール』辞典 その2

【セリフ】編

・藤堂先生(森山直太朗)、幼少期の裕一に。
「人との違いを気にするな」
「人よりほんの少し努力するのが辛くなくて、ほんの少し簡単にできること、それがお前の得意なものだ。それがみつかれば、しがみつけ。必ず道は開く。」←これ最強。

・音のお父さん(光石研)、幼少期の音に。
「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいってな。」
・関内家のお母さん(薬師丸ひろ子)、三姉妹に。
「お父さんはいる。目には見えないけれど、ずっとあなたたちのそばにいる。」←本当に来た!

・夫を亡くした光子(薬師丸ひろ子)を「女子供」と馬鹿にし、いやらしい暴言を吐く取引業者(平田満)に契約書を見せながら、啖呵を切る光子。
「女子供ですけど。」

※ちなみに、この平田満が話す方言が、かなり耳慣れているように感じたのは、ここで採用された豊橋の方言と、私が生まれ育った静岡県(元)榛原郡周辺の方言に似ているところがあるからだと気づく。

・お父さんを亡くした幼少期の音。元気に振る舞う音の強さを羨ましく思う同級生。
「どうしてあんたはそんなに平気なの?」に対し、音。
「平気じゃないよ。でも、泣いてばかりいられないから。」

【キャスト】編で書き忘れたが、幼少期の音、清水香帆ちゃんの竹取物語での堂々とした歌、素晴らしかった!!!

・親族の反対の中、家を捨て、音楽の道に進む裕一に、三郎(唐沢寿明)。
「おめえだけは自慢だ。必ず成功する。」
「おめえが捨てたって、俺はおめえを捨てねえ。」

・「紺碧の空」に曲をつけられず、諦めている裕一に、元バッテリーの清水君との身の上話をする応援団長(三浦貴大)。
「野球ば(を)がんばっている人のラジオば(を)聴いて、がんばれる人がいる」←まさしく、これも”音楽”

・同級生が新人賞を取る一方で、小説にうまく向き合えない梅(森七菜)に、あの世から里帰りしている父(光石研)。
「負けを認めるということは、大切なことだ。負けを受け入れるから、人は成長したり、挑戦できる。」
その父へ、梅。
「今まで全てのことを斜めから見過ぎっとったかもしれん。」
「まっすぐ生きてみる。自分とか、小説、まっすぐ表現してみる」

・梅に裕一への尊敬の念を話す五郎。
「売れる音楽を作り続けることがどんなに大変なことか、そんで、あったかい家族もいて、先生は俺の憧れです。」←売れる音楽を作ったことも、作り続けたこともないけれども、第一線にいること・・・第一線にいなくとも、どの道でも、その道で自分や家族の生活を成り立たせることができることは、本当にすごいこと。並大抵の才能と努力では実現しない。

・才能がないと落ち込む五郎に梅。
「わたし達の急務は、ただただ眼前の太陽を追ひかけることではなくて、自分等の内に高く太陽をかかげることだ。」と島崎藤村の言葉を引用し、
「五郎ちゃんがどう生きたいか。」←前述の一方で、才能によって生活を支える職業選択としては限られることはあっても、どのレベルであろうとも、何をやりたいのか、自分がどう生きるのか、決めるのは自分。

・吟(松井玲奈)に「このご時世に、音楽教室なんて何の役にも立たんでしょう」と言われ、音。
「こういう時代だから音楽が必要なんだよ。」←超重要。超~重要。

・池田(北村有起哉)、彼の奥さんが家を出て行ったことを心配する裕一に。
「ホントに縁があるんだったら、ジタバタしなくてもまたつながる。」←この悟りと実践力はすごい。そう思っても、人の気持ちは、なんとなくは感じ取れても、わからないことも多く、ジタバタしてしまうものだから。

その3【○○】編に続く(予定)。
 
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『おちょやん』開始までには終わらせたかったけど・・・これで最後!

わたし的『エール』辞典 その3

【その他シーン・演出】編

・運動が苦手な裕一。運動会で転び立ち上がれない裕一に向けて、藤堂先生の指揮でハーモニカ演奏が始まる。裕一にとって、初めて音楽の力で立ち上がるシーン。「初めてのエール」。

・裕一と音との手紙のやり取りが切なかった!手紙を心待ちにしたり、音が、書かれている内容によって、手紙にキスをしたり、震えが止まらなかったり、一喜一憂する姿・・・現代のように、一瞬で文字のやり取りができる状況以上の、切ない心の揺れが想像でき、たまらなかった。

・序盤のクライマックス、裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)との結婚に向かって、この2人と、裕一の父三郎(唐沢寿明)と音の母光子(薬師丸ひろ子)とで、テーブルを囲んだ4人のコントが抜群過ぎ!!!一瞬も目が離せない濃い回だった。そして、裕一と音の接吻現場に、お茶を運んできた光子が遭遇、この時の薬師丸ひろ子がの動きが上手過ぎ!!!かわいかった。

・「○○についてはまた明日」や、シーンの途中で余韻もなく、突然その日の回が終了する、朝ドラには珍しい斬新さ。

・豊橋のホールでの演奏会で、裕一の指揮の演奏で歌う音。本番の舞台で声が出なくなる音への裕一の対応に感動。
「声が出なくなっていい。かすれたっていい。音楽は心だ。心から思い乗せて歌えば、きっと伝わる。大丈夫。僕一緒だから。歌える。」
そして、会場へ呼びかけが秀逸すぎる。
「彼女は昨日ちょっと練習し過ぎまして・・・」と会場の笑いを誘い、
「声が出づらくなってますが、僕は彼女の歌が聴きたいです。皆さんはいかがですか?」
(会場から拍手)
そして、いざ、続きの歌声を待っていると、場面が変わる「フェイント演出」。最後に海辺で歌うシーンに重ねて、ホールのシーンが回想される。

裕一が一度音楽から離れる時の演奏会や、「紺碧の空」が披露される時なども、この手法が印象的だった。

・三郎があの世へ旅立つ回や、藤堂先生が亡くなる回以降のその週、音が教会で歌い再起する回で、”元気な主題歌”がかからない演出が沁みた。

・音の音楽教室に、母親の勧めでいやいや参加していた弘哉君。歌が苦手で、周りの反応に心を痛め、教室を辞めようするが、裕一が勧めたハーモニカで音楽の楽しさを知る姿に心打たれる。苦手なことも、時にはやらなければならないこともあるし、やりたいことならばがんばればいいと思うけど、苦手でやりたくないことを、必要がないのに無理やりやるのは苦しい。しかも周りができている中で、自分だけができない状況はいたたまれない。子供も大人も、得意分野を知って、そのフィールドで才能を活かせることが、いかに重要なことか・・・。

・音が苦しみながら歌に打ち込んでいる一方で、やりたいことがないことに悩む華(古川琴音)への吟(松井玲奈)の対応が沁みた。
「若い頃はやりたいことなんてなかった」
「才能って大げさに聞こえるけど、普通の日常の中に転がってると思うのよね」
と、二人の妹と自分との違いを受け入れた吟のセリフには説得力があった。

【キャスト編】【セリフ編】で書きそびれた、松井玲奈の株が上がったシーン。

・自分の実力を知り、2度目の主演舞台降板で落ち込む音に、教会での慈善音楽会で、自身が作った曲を歌うよう勧める裕一。
裕一も一度は好きなことを諦めた辛さを経験していることが重なる。2人が出会った原点、音が歌への憧れを抱いた原点の教会。
自分の好きなものがわかっていても、それをどう表現するのが自分にとって一番合うのか、それを掴めるのは簡単ではないけど、重要なこと。
華にも伝わって、よかった。この教会のシーンを観ながら『天使にラブソングを』が浮かんでいた。

・終盤、いつの間にか「喫茶バンブー」がジャズ喫茶に。ここ行ってみたい。

・華とアキラの結婚パーティで、アキラのバンド演奏に乗っての参加者の「裏打ち手拍子」が見事過ぎるのが、時代的に少々気になったが、「ジャズ喫茶バンブー」の常連客で耳が肥えていると解釈する(笑)

・「オリンピック・マーチ」の回は、当初は、現実のオリンピックの余韻に浸る形で放送される想定だったのだろうと思いながら観た。今の現実は、一年前には、皆が映画の中の話だと思えるような世界を生きている。人間の頭では予想できないことが起きる。平穏な日常が続くことは、当たり前ではなく、何かに気づかなければならない時なのだとも思う。

原始時代から始まったかなり斬新なオープニングの時点からは、制作側も、出演者も、視聴者も誰もが想像がつかなかった「史上初」の朝ドラに。元々、週6放送から週5放送に変わる初めての朝ドラで、前回の『スカーレット』が全150回に対し、元々130回予定だったところ、コロナ渦で全120回となる。特殊な事情で致し方がないのを理解しながら、怒涛の終盤、入れ代わり立ち代わり、山場の嵐でなかなか忙しい鑑賞と感じると同時に、裏でどれだけ熱い努力がなされたかとも想像した。

オリンピックを想定していたであろう「エール」が、本編最後に窪田正孝も言っていたが、コロナ渦での「エール」に。ドラマの内容には、思うところが全くなかったわけではなかったが、総じて、自分の好きな音楽を通して「生きる」力を魅せてもらえた。最終回のコンサートは、手放しで楽しめ、癒された。「岩城さん」の歌唱力が一番の驚きで、思わずテレビに近づき、正座して凝視するほどだったが、子役の勢ぞろいも嬉しく、そろって歌う「とんがり帽子」には顔がほころんだ。

・最後に一言。振り返り回、必要?
・・・と思いつつ、このサイズで楽しんでいる方もいるかと思い直し、でも、騒がしいナビゲーションはいらないと、個人的には思う。

これで心置きなく、『おちょやん』にスイッチ。『チョッちゃん』と言い間違えそう。

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