『おかえりモネ』個人的メモ

10月30日にFacebookに投稿した『おかえりモネ』メモをこちらにも残しておこうと思います。

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諸々態勢が整わず、7月のライブ報告以来に。なかなか発信モードになれませんでしたが(閲覧も間隔が空きがちで失礼しております)、いつの間にか恒例にさせていただいております朝ドラまとめで・・・久々の投稿を。

昨日最終回を迎えた『おかえりモネ』について。

今回も、登場人物を軸にした俳優さん別に、私視点の勝手なコメントを記しておきたいと思います。読み手に優しくない大量文ですが、ご興味ありましたら覗いてみてください。

■清原果耶(永浦百音)・・・『あさが来た』(当時13歳!)→『なつぞら』→今作と、朝ドラ3作目、まだ19歳!にして、なんたる落ち着いたヒロイン。朝ドラ史上一番の低体温ヒロインだったのでは・・・個人的にはとても好みで、ドラマ自体も、どんな事件があっても、重心が下にあるような落ち着いた空気感が魅力的で、いつも引き込まれていた。個人的に感じたこのドラマの大きな2つのテーマ。

「自分のためか、人のためか。」
「痛みの手放し方。」

妹との葛藤を通して自身の心を掘り下げていった、彼女の真実味のある演技から、多くを考えさせられた(詳細は文末に)。ラジオ放送を始めた時にモネが流した『アメリカン・パトロール』。個人的には、それを耳にした時の高揚感から、最後みんなで演奏するところまでを期待していたが(トムさんにも聴いてもらいたかった)、落としどころとしては、とても自然で納得。なんにしても、菅波先生と無事再会できて、手をつなげて(結ばれて)よかった。 

■蒔田彩珠(永浦未知)・・・彼女は『重版出来!』で、落ちぶれたかつての人気漫画家の娘役で異彩を放っていたのが忘れられない。すっかり忘れていたのは『とと姉ちゃん』出演者(ヒロインの妹の娘役)だった!今回、姉のクールさとは色の違うクールな妹役での登場に、最初からピッタリだと思っていたが、回が進むにつれ、心の痛みからの葛藤や闇を内包した難しい役どころ、さらに彼女のハマり役だと思った。姉妹の心情をここまでリアルにぶつけた脚本も、演技もすごい。最後の最後で浄化できてよかった。準主役。お姉ちゃんに「おかえり」言ってくれてありがとう。

■坂口健太郎(菅波光太朗)・・・『とと姉ちゃん』でもヒロインの相手役だったが結ばれずじまい。今回は・・・よかった。本当に。菅波先生は、彼以外考えられないハマり役。素晴らしかった。大きな話題になった菅波砲にはもれなくやられてしまったが、医者として、現代医療の最前線に関わりながらも、「手当て」の大切さを言葉にできる面にも、とても共感。以下、印象に残ったセリフ→

「『あなたのお陰で助かりました』っていうあの言葉は麻薬です。」戒めと感じつつ、菅波先生の痛みの表現でもあったと理解する。

「あなたの痛みは僕にはわかりません。でも、わかりたいと思っています。」

「小学生か・・・」
「どうしたの?」

「19:5」と言いつつ、結果的には、微妙な関係のりょーちんの背中を押すことになるシーンも魅力的だった。

■内野聖陽(永浦耕治)・・・私が内野聖陽という俳優を強く認識したのは『JIN-仁-』での坂本龍馬役。登場すると、その場の空気をかっさらう、超ハマり役だった。最近では何と言っても『きのう何食べた?』。西島秀俊のパートナー役・・・指先まで細かな”シナ”の作り方、完璧な女形、本当に素晴らしい演技力。脚本は今作と同じ安達奈緒子。楽しみにしていた浅岡さん(西島秀俊)との絡み。ヒロインの父親という”男性”としても、素晴らしかった。耕治さんも最後まで痛みを抱えてた。でも、前へ。

■鈴木京香(永浦亜哉子)・・・今回の名セリフ「正しくて明るくて、ポジティブで前向きであることが魅力にならない世界なんてクソです!」。『君の名は』のヒロインが、母親に。私が彼女を強く意識したのは『王様のレストラン』でのバルマン。西村雅彦の愛人役。以来、”女性”として(陰の面でも)強く生きる姿を多く目にしてきたが、今回は、陽の面を全面に、抜群の包容力を持った妻として、母親として、先生として、そして、子を持つ母親の機微を演じる姿は新鮮でもあり、実に巧みだった。りょーちんがモネに「綺麗事」と言い放つシーン、止めに入った亜矢子さんは抜群だった。なかなかあれはできない。

■藤竜也(永浦龍己)・・・なんて渋くてキュートはおじいちゃん。セリフには重さが宿っている。

「山は海とつながってるんだ。なーんも関係ねぇように見えるもんが、何かの役に立つっていうことは、世の中にはいっぺいあるんだよ。」

「なんか続けるっつうことはよ。・・・変えなきゃいけねぇものは、とっとと変えてよ。大事なもの守ってけばいいんだよ。」

縁側でそばにいたカエルちゃんもキュート。そして、奥さんを「ハニー」と呼ばせたら右に出るものはいない。

■竹下景子(永浦雅代)・・・牡蠣から、苗木へ。「笛」から芽が出た「苗(木)」に!(このアイデアもすごい)。モネを見守り続けて、龍己さんの元へとしっかり還ってきた。みーちゃん、大丈夫だよ。竹下景子のイメージは、『北の国から』での若き日の美しい「雪子おばさん」と『クイズダービー』での「三択の女王」が強かったが、おばあちゃん役に、時の流れをしみじみと。

■浅野忠信(及川新次)・・・存在感がいつも気になる役者さん。今作は、鬼気迫る演技も、モネへの接し方、話し方も、なんてリアルで圧倒的な演技・・・!素晴らしかった。終盤の「あの場面」には号泣。すご過ぎて詳細は割愛。

■永瀬廉(及川亮)・・・これまで「King & Prince」の中で存在を意識したことはなかったが、今回出演当初から、影ある表情、自然な演技が目に止まる。ただの恋愛感情だけでない絡みで姉妹の間に存在するキーマン、この難役「りょーちん」は、彼の役だったと思う。ただ一つ、終盤の親父・・・浅野忠信との絡みでは、もう一歩迫力が欲しかった(現時点では酷かもしれないけど)。今後に期待。とにもかくにも、最後には、恐れを手放し、船を手に入れた「りょーちん」はえらい。「おかえりモネ」言ってくれてありがとう。

■前田航基(後藤三生)・・・前作『おちょやん』では、弟の旺志郎がかなりの好演だったが、それにしても「まえだまえだ」の2人は、兄弟共にいい役者に成長したこと!三生、寺を継ぐことを決意してからの精進、活躍ぶりは素晴らしかった。「皆で祈れば叶うんだよ!・・・俺らはUFOだってなんだって呼べんだよ。・・・俺ら、もう普通に笑おうよ。」まっすぐな三生がいてくれてよかった。きっといい僧侶になる。

■夏木マリ(新田サヤカ)・・・サヤカさんも、彼女しかいない。豪快さと優しさは『カーネーション』の糸子に通じるものがあったが、サヤカさんには、人間の欲を超越する更なる深みがあったように思う。ちなみに、夏木マリとしての強烈な第一印象は、私が小学生時代、薬師丸ひろ子主演映画『里見八犬伝』での玉梓役。大胆な妖怪役が異常にハマっていた。ある意味、現在も妖怪のようだが、かなり頼りになる妖怪。能を舞う姿も決まっていた。

印象に残ったサヤカさん語録→

「若いあんたから見っと、余裕しゃくしゃくで生きてるように見える立派な大人も、ホントは、ジタバタもがきながら生きてんの。案外傷ついてるし。必死なのよ。」

「天の陰陽が整うと雨が降る」

「認められるということは、信用されるということ」

■西島秀俊(朝岡覚)・・・『とと姉ちゃん』でのヒロインの父親役では、残念ながらすぐに亡くなってしまったが、今回は最後までヒロインの大きな力に。冷静に情報を扱い、人間ができることとに最大限の力を注ぎながらも、人智が及ばぬ領域があることも冷静に認知し、的確な指示を与える素晴らしい上司。そんなセリフを下記に。『あすなろ白書』の頃は、あんなに線が細かったのに、いつの頃からか、かなりの骨太俳優に。常に安心感。

「知識は武器です。持ってるだけではなんの意味もないし、使い方も難しい。ですが、持っているに越したことはありません。」

「人はわからないものを怖がります。相手をよく知るということは、恐怖と被害を遠ざけます。」

「私達は自分たちの力を過信してはいけません。・・・祈ることしかできないという経験を、私達は何度もしています。」

そして、サヤカさんの木の保管場所を探すシーンでの、”神社に災害がない”という事実と、宮司さんのセリフも興味深かった。

「そもそも神社なんて、土地を守る役割を担っているんですよ。」

■今田美桜(神野マリアンナ莉子)・・・「人の役に立ちたいとかって、結局自分のためなんじゃん?」「自分が人に認められたいとか、有名になりたいとか、そういう欲求の方がシンプルだし、嘘がないって気がするだけ。」・・・菅波先生の「”あなたのお陰”は麻薬」発言に続き、大きな問題提起をしてくれた莉子。幼い頃からから誰もが持ち合わせている自己成長欲。確かに嘘はない。でも、なぜか、それだけじゃいけないという気持ちを人間は心の奥に持っているし、いつか壁にぶつかる。本当の意味で進んでいけない。それを自ら見せて進んで行ってくれた。個人的には、鮫島選手が引退後の身の振りをモネに伝えるこのセリフが、回収の一つであったように思った。

鮫島「次は人の役に立ちたい」(驚くモネ)
モネ「私だってずっと思ってます。誰かの役に立ちたいって。」
鮫島「そうや。大人こそ、照れずに言っていかなあかんで。そういう熱い思いを。」

■菅原小春(鮫島祐希)・・・『いだてん』に続く、アスリート役。本業のダンサー時も、素の寡黙でかなりシャイな様子とは打って変わる、キレッキレのパフォーマンスにいつも目を奪れ、そのギャップ萌えをするのだが、今回の強烈な役どころ、かな思い切ったのだろうと想像する。演技は苦労したと思うが、ダンサーとしてのアスリート魂が活きたパフォーマンスを見せてもらった。

■清水尋也(内田衛)・・・まさか「マモちゃん」になるとは。マッシュルームカットも似合ってたけど、スーちゃんに育ててもらってよかったね。天気予報士としても、浅岡さんの目に狂いはなかった。頼もしい。今回初めて彼を知ったと思っていたが、検索したら、広瀬すず主演『anone』で重要な相手役「彦星君」だった!驚き!!

追記:莉子へのこのセリフもよかった。

「生きてきて何もなかった人なんていないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ。自覚しているかしていないかは別として。」→誰にでも何かがあって、そこから得られるものが人生の大きな糧になると、個人的には思う。

■高岡早紀(高村沙都子)・・・アイドル時代は、正直垢抜けない印象だったが、いつの間にか、かなり貫禄のある女優さんに。今回の高村さん、表情やセリフ回し、立ち振る舞い、どれもかっこよく、個人的にツボにはまって気持ちよかった。

■玉置玲央(沢渡公平)・・・『ひきこもり先生 』で、かなり印象的なひきこもり役の演技を見たばかりだったので、今回の社会部記者としてのスッとした役どころ、演技力に目を見張った。

■マイコ(井上菜津)・・・彼女を知ったのは『おひさま』ヒロイン井上真央の友達役として。もう10年前!元々、サッパリと落ち着いた雰囲気だったが、歳を重ねて、味わいが増し、頼れるお姉さんに。宇田川さんの最大の理解者。宇田川さんは幸せ。妻夫木聡の奥さん。絶対いい奥さんだと思う。

■石井正則(宮田彰悟)・・・お笑い芸人出身のいい役者さんはたくさんいるが、彼の持つ独特な空気感は稀有なものがあると思う。宮田さんが乗り越えた痛みが、菅波先生の痛みを救った。淡々とした語り口調に真実味と重みがあった。

■菅原大吉(太田滋郎)・・・『あまちゃん』「ブティック今野」の店主役が忘れられない。今回のツンデレ演技、さすがのバイプレーヤー。

■でんでん(川久保博史)・・・彼も『あまちゃん』漁協の組合長。『SPEC』などなどだが、何と言っても『お笑いスター誕生!!』。いつでも「でんでん」だけど、癖になる演技。  

■浜野謙太(佐々木翔洋)・・・『とと姉ちゃん』組。「SAKEROCK」は、とても優秀な俳優を2人も排出している。

■斉田季実治・・・いつもNHKニュースで目にしている現実の気象予報士さん。『サラメシ』で、気象考証の様子を目にし、感銘を受ける。本編にも、モネのプレゼンの審査員役で登場。

最初から最後まで、静かながらも、深く、特に終盤、濃さを増し、すべてのものが回収され、浄化されていく、素晴らしい脚本だった。最後のシーンだけのコロナの描かれ方も秀逸。安達奈緒子、恐るべし。

人間の持つ両面。弱さと強さ・・・誰もが何かしら、誰にも言えない痛みを抱えている。はき出すことの重要さ。それを受け止める強さの重要さ。それでも言葉にできないことには、寄り添うことの重要さ。時と場所と状況によって、入れ替わる役割。弱さと強さ、どちらかだけでも成り立たない。動けない痛み、弱さを経験したら、次は受け止める側に立てればと、立ちたいと思う。

安達奈緒子x清原果耶の『透明なゆりかご』。リアルタイムでは、気になりながらも、個人的「痛み」で手を伸ばせなかったが、いつか見てみたいと思う。

最後に、関連音楽について。

このドラマの最初の印象は、景色とBGM(ピアノや女性の歌声)の綺麗さ。心地よさ。アルファ派が促されるようで、現実の閉塞感からの解放への意図を感じた。

それから、主題歌『なないろ』も。

♪おはよう 僕は昨日からやってきたよ

のところ。歌詞とメロディが心地よく、好きで、よく口ずさんでいたのだが、歌ってみると、ここの音程を取るのがかなり難しいことに気づく。BUMP OF CHICKEN 藤原氏の歌の上手さにも改めて気づく。

コロナ渦以上に、個人的には更年期の荒波にもまれ、体調諸々整わない状況の中、音楽が身に沁みる。音楽は大切。必要。自分にとっては、マスト。
自分のためにも、そして、叶うことなら、人のためにも、準備が整ったら、また歌い、演奏したい。

月曜日からは『カムカムエヴリバディ』。楽しみ。

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